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オピニオン・リーダーの声

オピニオン・リーダーの声

竹中 平蔵 氏
元・経済財政政策担当大臣・総務大臣/日本経済研究センター研究顧問

竹中 平蔵

1951年生まれ。73年一橋大学経済学部卒業、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。大阪大学助教授、ハーバード大学客員准教授などを経て、96年慶應義塾大学総合政策学部教授。金融担当大臣、経済財政政策担当大臣、総務大臣などを歴任。06年慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長、日本経済研究センター研究顧問。16年4月から東洋大学教授。
著書は、『「経済ってそういうことだったのか会議」』(日本経済新聞社)、『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』(日本経済新聞社)など多数。

フロンティアに求められる経済知力

さらなる経済発展へ知力向上を

1960年代以降、高い経済発展を遂げてきた日本は、90年代の「失われた10年」を経て、不良債権問題を解決し、2%強の成長に戻った。日本の生活水準は世界でも高く、フロンティアに立っている。そうしたなか、その先にいかに進んでいけるかということが問われている。 経済を発展させる原動力は知的な力だ。日本を追いかけようとしてくる国がたくさんあるなかで、さらに経済を前進させるためには知的な力を、広い意味での知的な力を高めていくしかない。これまでのようにキャッチアップするために既存の知識を学ぶのではなく、新しい知識を吸収し、知的な価値を創造していく能力が必要だ。 最近の日本は知的な力が落ち、フロンティアとして先に進むための変化に対して非常に臆病になっている。それが日本の経済が停滞してきた理由でもある。 変化を恐れるのは自信がないからだ。自分の能力に不安があるから、新しい状況や秩序についていけないのではないかと不安になる。一層複雑化する経済・社会事象に対応するためには社会システムを柔軟に変化させていかなければならない。そのためには広い意味での教育、リテラシーを高めて個人の能力を高めることが重要な条件となる。

知識より、考える力が大事

経済の重大な特徴の一つは、絶対的な正解はないということだ。 例えば、円が高くなったとして、今起きている円高は以前の円高とは違う。経済はものすごく複雑な事象が組み合わさっており、今起きていることは初めての現象といえる。だから、ハウツー的な知識はあまり意味がなく、根本から考える力がないと対応できない。 日本の失敗はそこにあった。経済が停滞しているから公共事業を増やすというのは典型的な間違いで、過去の不況と90年代の日本の不況は意味が違う。考える力を持たないことが「失われた10年」につながった。 絶対的な正解がないということは、考えることが楽しくなることでもある。誰も正解が分からないのだから、物怖じしなくなる。私は経済学の社会教育をボランティアでやっており、小学生に「僕も君も同じ立場なんだ」と話すようにしている。「(元首相の)小泉さんに聞いたって同じなんだ。だって正解はみんな分からないんだからね。だから堂々と議論すればいいよ」と。 考えることで課題が見つかる。よく言うのは、問題解決型でなく問題発見型の人間になれということ。問題を発見するのはとても難しいことだ。 今の政権もアジェンダ設定ができていない。成長戦略といえば誰も反対しないが、どうやって成長するのかという戦略的なアジェンダがない。小泉さんが国民の支持を得たのは、「小さな政府をつくる、それが郵政民営化だ」と明快に示したからだ。

社会人も勉強しよう

日本の社会には、受験をクリアすれば勉強しなくていい、会社に任せておけばいいという風潮がある。そうしたことが人材の劣化を招いている。経営者も政治家もみんな勉強が必要だ。世界の企業経営者やCEOは経済のことを実によく分析的にみている。 米国の大学では学部・大学院の学生として登録しているなかで25歳以上の比率が4割程度に上る。逆にビジネススクールや大学院は社会人経験がないと入れないところもたくさんある。ところが、日本では大人は大学に行かない。行政が子供の教育は文部科学省、大人の労働訓練は厚生労働省と縦割りにしてきた弊害でもある。本当は、いわゆる教育と、労働のための社会教育、労働訓練というのはシームレスで、継ぎ目なくつながっていなくてはいけない。 勉強するのにきっかけがいるという問題はある。とくに経済は間口が広いだけに、なかなかきっかけがつかめないということもあるだろう。そういうきっかけを日経TESTにつくってほしい。

日経TESTで考える訓練を

英語にコンペティティブ(Competitive)とコンピタント(Competent)という2つの単語があり、私はよく「コンペティティブとコンピタントは違う」ということを話す。コンペティティブというのは現状のルールの中で競争力があるかどうかで、例えば「エクセルをこんなに使いこなせる」というのはコンペティティブだ。コンピタントは、エクセルがもっと新しいシステム、パラダイムになっても、したたかにやっていける能力を持っている人のことをいう。 今の受験勉強は一種の反射神経だ。そういう意味では、反射神経はみんな結構持っている。しかし、まったく違う状況が起きたらどうだろうか。右からパンチがとんできたらこう受ける、左からきたらこう受けると分かっていても、後ろからきたらどうするかというコンピタントな能力を身につけるのはなかなか難しい。 コンピタントになるには、基本をもとに考える力を養う必要がある。常に具体的な問題に接して考える訓練を積むことが大事だ。難しいことだが、そういうことを日経TESTに期待している。

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